「こんな出会いもいいではないか」 プチ続編 4.季節の変わり目 「いったいどうなってるんでしょうかね」 ここ最近は、と言い置き果恵は恨めしげに空を見上げる。 つい十日ほど前は暑い暑いと連呼していたというのに、ここ数日は転じて肌寒いと感じている。 暑がりの果恵の箪笥の中はいまだ夏服が半分以上の割合を占めていて、それでも時折暑さがぶり返すもの だからしまいきれない。どちらの気温でも良いようにと、授業を受けに行く時は 半袖に羽織物というスタイルで着まわしているのが現状だ。 通常の秋口とは明らかに違うたった数日での気温変動の激しさは、明らかに異常気象が起因しているのだろう。 だけど今、果恵が呟いたのは何も地球の未来を憂いていたからでもなんでもない。 未来は真剣に考えている。だけど地球の事ではなくて自分の事だ。 「ゆゆしき事態だな」 直ぐ隣から聞こえた しかめっ面でもしていそうなその声は、もはや馴染みといってもいい。果恵の母校で教鞭をとる男、家持章仁。本来全く関係の無いはずの二人だが、彼女の卒業を機に二人は"友人"になったのらしい。 らしい、だなんてわざとらしくつけて抵抗を示してみても、果恵自身もう家持の事を一教師としては 見れなくなっているから困っている。 そりゃあそうだろう。あれだけ容赦なくつれまわされたんだから。 今だって大学の授業後でいつものように家持の車でドライブしている最中で。 乾いた笑みで果恵は家持を見上げてみた。 見慣れた角度でみた家持は都合よく勘違いしたまま、天気の事を話題にしている。 その話の節々でわかる言葉の癖や仕草表情。大概がわかるようになってしまった。 「ほんっと、どうしたもんでしょう」 ため息と共に呟いた果恵の言葉に、「なるようになるんじゃないか」と洒落にもならない 返事が返る。相手が運転中なのをいいことに、果恵は思わず口の端をかすかに引き攣らせ 傍白した。 なるようになってはいけない気がするんだけど…… (2007年10月13日〜10月27日) 戻る / 書庫へ / 本編へ |