トリッキーな君達へ プロローグ


子供のころから、私はやたら目立つ子だった。
めだつ、といっても私は何でも出来る優等生でもなく、逆らってばかりいる困ったさんでもなく。
じゃあ何がそんなに目立っていたかといえば、いたって話は簡単。

この体格のせいである。


『幼稚園に入る前まではねー。かわいいかわいいと皆にいってもらえてたのに。』
ほぅと悩ましげにため息をついて母親はいつも私をなぞめいた視線で見遣る。
『どこで間違えちゃったからしら』
スレンダーで顔も平均よりは整った母親の子と思えないくらい。
私はそこら辺の使い古されたフレーズを使うならば正真正銘の"デブ"なのだ。
幼稚園の年長さんのころ、私は既にパンパンに体が膨れ上がっていた。
母いわく、私がポテトチップスにはまったのがきっかけだという。
なにはともあれそれ以来、やせるという事を知らぬ私の体と、困ったくらいに食欲旺盛の 胃袋、もひとつプラスするならば究極のインドア系の嗜好が今日の私を構成している。
思春期の終わりごろ、食欲が少しずつ薄れつつあっても、それでも人の数倍良く食べる。
そんな私の体重は70キロをとうに通り過ぎて、おそらく同じ年頃の女性からは想像の出来ない 総重量だ。
だからといって別にさけずまれたこともなければ、まだ着る服だってある。
多少太ってたって、それでどうして弱気にならなければならない。
自分の体型に関しては、それくらいしか思ってない。 だけど私は、この痩せ型の多い日本社会でかなり目立つ人種となってしまうから、 そのたびに突き刺さる視線が正直かなり鬱陶しい。
税金だってきちんと払って真っ当に生きてるのに、体型ごときでなんでそこまで 注目されねばならんのだ!
この世に 生まれ落ちて25年と10ヶ月。本人がそこまで気にしていなかったから、 当たり前だが家族も友人も特に 何も言ってこなかった。
そりゃあたまにはあんな可愛い服が着れるようになりたいなとは思うけど、 それとこれとは話は別。
ダイエットなんて、考えたことすらなかったのに。
突然、数キロでいいから落したいなんて思ったのは、どうしてだろう。
考える前に、きつくきつく蓋をした。
目下の悩み事を、今は思い出したくもなかったから。
それなのに"彼"はずかずかと人の領域に入ってくる。
茅ヶ崎準ちがさきじゅん とは、そういう奴だった。


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