ファンタシア6




暖かな日差しがタルミラの丘をまぶしく照らしあげる。
小鳥達が気持ちよく歌う、なんともさわやかな一日だというのに 、珍しくもセシルは脱走を試みようとはしなかった。
正直、外へ行きたい気持ちは山ほどに高くつみあがってはいるが、 それをさせない事情がある。
見つからないのだ、あの日の少年が。
水色の髪に、青い瞳。
それに加えて、人形よりも決め細やかな肌をもつ美少年など、 そうそういないであろうに、セシルたちのもとへ、少年捕獲の朗報が 届くことはいまだに無い。
もう、舞踏会から一週間がたっていた。
あれからイグルイースの姿を見ることは一度もなく、かわりに勝手な噂が一人歩きしていた。それらの骨格をなす『キラマイア邸の門番を素手で倒した美少年が貴族の魂を狙っている』という噂は貴族達の間を駆けめぐり、いたずらに貴族達に恐怖心をたきつけていた。
ただでさえ忙しいこの時に限って、貴族からひっきりなしに接触が入るのだ。
セシルが外出できないほどに、騎士団本部は全稼動していた。
「あいつら、自分の身ぐらい自分で守れよ」
忙しくて仕方が無くて、ここ数日剣をも握れていない。
荒々しく椅子に座りながらセシルの口から漏れる愚痴に、 ルードが無言で賛同した。
セシルとは違い、いつも黙々と仕事をこなす彼だって 、歴とした軍人であり、剣士である。
デスクワークに縛りつけのこの一週間をとてつもなく疎ましがっているのが 、彼と同じ気持ちなだけによくわかる。
「あの貴族の人たちにそんなこと言っても無駄ですよ」
見かねたエンドが困った顔で二人の団長を眺めた。
「それにしても、あの少年の噂、本当なんですか?」
机に散在する書類をチラリと見て、エンドは息をついて サイン済みのものだけを器用にとりあげていく。
そのしぐさを目で追いながら、セシルは同僚に視線をやった。
お互い、なんとも微妙な顔をしていることだ。
イグルについての噂は、どれもこれも当たっているようで、全て違うものである。
はじめはただ「番人数人をあっさりと素手でのした美少年」だったというのに、 今では「森の妖精の化身のしわざ」である。
確かに、人間ならぬものを感じるが、彼としっかりと対面し会話を交えた 二人にしてみれば、思わず苦笑いをするしか道はないのだ。
「半分あってるよ。奴が素手でよろいを着た番人を倒したのは事実だ」
部屋中に広がる書類のほとんどが、それの事後処理といってもよかった。
いらぬ置き土産をしてくれたものだと息を吐けば、納得しがたい顔で エンドが束ねた書類を抱えあげた。
「イグルイースだなんて、何だってそんな名を名乗っているのでしょうね」
たとえ禁忌の対象といえど、その名は神のものだ。
神殿育ちのエンドが嫌がる理由も、セシルにはよくわかった。
(そういや…)
文を追う目を、思考とともに停止する。
(こいつは、魔術を使えるんだった)
握り締めたペンをそっと机に沿わせ、セシルは自分の補佐官をさりげなく みやった。
魔術と神術の違いなど、わかりはしないが、非常に距離の狭まった ベン図のようなものだと前にエンドが言っていたことを思い出した。
人生のほとんどを神殿に従じるエンドなら、 あの夜のイグルの使った魔法が、わかるかもしれない。
セシルは再び目を通し始めたその書類をふいに脇にのけた。
「セシル様?」
いつもどおり、怪訝な視線をこちらにすぐさま向けてきた 優秀な彼に苦笑しながら、セシルは居ずまいを正す。
「エンド、おまえ空中に浮く魔法を知っているか?」
「浮遊術ですか?そうですね、あまり良しとされませんが、あることは あります」
セシルのその問いに、勿体をつけずにエンドは答えを返す。
が、あきらかにこわばった瞳の色を見逃すほど、セシルは鈍くはない。
「良しとされない、とは?」
静かにたずねるルードに戸惑うように視線をやって、 エンドはコクリとうなずく。
心なしか何かを逡巡するその顔を、セシルは腕をくんでみていた。
「…書類上にも、書いていない。貴族の噂にすら上らなかったひとつの事実がある」
低く声を出すのは、何人にも知られては困るからだ。
二人がであったあの夜の出来事は、ごく限られた人数しか知らない。
当事者の二人。残りの騎士団長二人。そして、国王陛下。この五人だ。
だけど、エンドになら陛下の許可なしに相談してもいいだろうと、セシルは思う。
陛下は、エンドの実力を認めているし、逆にそういったことすらお見通しであろうから。
「俺とルードの前で、そいつ浮いたんだよ。ふわりと地を蹴りすらせず に、まるで空から引き上げられるかのように」
「……」
黙り込むエンドは、やはり何か心当たりがあるように見える。
さらに険しくなった彼の眉間を確認しながら、セシルはさらに言葉をつむいだ 。
「青白い光りが奴を包んで、その光があまりにもまぶしくて俺もルードも目を瞬間そむけたんだ」
「青白い、光…」
うめくようにつぶやく部下の声に、セシルは説明をやめた。
硬い表情を隠せないエンドは、セシルの机の傍に近づき、 すえられた椅子へと座る。
普段の彼とはどこか違う、深刻な表情に胸が震えた。
「私は、浮遊の術をする集団を、ひとつだけ知っています」
緊張が走るその声に、セシルとルードは無言で聞く側に入った。
「だけど、ああ、そんなこと…」
いまだ合点がいかないというよりは、厄介なことになったといった 響きがたぶんに含まれていたと思う。
セシルは聞きながらも、そう思った。
「お二人は…空に人が浮く魔術を以前見たことはありますか?」
「いや」
「俺もだ、あの夜が初めてだったな」
首を振って答えてやれば、エンドは重い息をひとつ吐いた。
「それが、あたりまえなんです。なにせ、宙に浮くということ自体が 魔術の中では御法度なんですから」
「御法度?」
思わず目を細めれば、エンドはこくんとひとつうなずきを返した。
「ええ。宙に…空に、浮かぶという行為は神にのみ与えられた特権。 我々はその行為をすることを禁じられていますから」
魔術とて、数千年のときの中でさまざまな形態を表す。
空を飛ぶ呪文は、とうの昔に発見されてはいたが、 長年その術自体を封印しているのが事実なのだというエンドの 説明に、セシルはむぅとうなった。
「ならば、その魔術を使うことを唯一神殿が赦した一族がいるということか?」
ルードのその言葉にセシルは、シリアの身の上を思い出した。
神の愛を一身に受けたカリアナならば、赦されているのかもしれない と思ったが、その夢想もエンドの険しい声で綺麗に飛散した。
「まさか!神殿が赦すわけない!奴らが勝手に禁を破っているだけです!」
セシルはわずかながら驚いて、エンドをみた。
口やかましいことは常々であるが、ここまで辛辣な激昂を彼は人前で 見せたためしがない。
よほどの奴らなのだろうと、セシルは我知らず息を呑んだ。
「ええ、奴らしか…"レールン"しか、考えられません」
「…!」
はっきりと言い切った彼の言葉に、動じることを知らぬルードが 驚いた顔をしたのが見えた。
そういう自分だって、やはり驚いた顔をしていることだろうことは、 セシル自身もよくよく理解していた。
まさか、この場にレールンの名を聞こうとは思ってもいなかったのだ。
レールンを最もわかりやすく説明をするのなら、 それはまさしくシリア達とは対極のものだ。
カリアナとはほぼ真逆であろう背徳の一族、集団を人はレールンという。
この地に人が根ざし国なすころにはすでに、両者は特別の位置として存在を し、カリアナ同様、この大陸の歴史の歯車を持つあらゆる意味において ”影の族”である。
「イグルイース・・が本名か通り名かは知りませんが、 十中八九レールンでしょうね」
「…手配をかけなおす」
立ち上がる音に振り向けば、ルードがそうつぶやいた。
「あ、それならお任せください。私がしてきます。 セシルさま、それでよろしいですね?」
GOサインを促す部下に、あぁと頷きセシルは付け加えた。
「陛下にもお知らせしたほうがいいだろう。エンド、それも頼む」
「了解しました」
すぐに戻りますと打ち切って、エンドは部屋を出て行く。
どんなときでも丁寧に閉められる扉の音を耳に残して、 セシルは厄介な奴らの追走に物憂げな思いを抱く。
(カリアナ同様、表にめったにでやしない奴らを追うのか…)
「骨になるな」
重々しい仲間の声に、セシルは思わず苦笑を漏らす。
まったく同じ事を考えていたのが、おもしろくもうれしくもあった。
「やってみせるさ。俺達は、オランディニアル騎士団なんだから」
どんな任務も遂行する。
非道だろうが、正攻だろうが、結果があればなんでもいい。
それが、この騎士団で、国を維持する中核の守り部署。
セシルのおどけたような口調に、ルードはふっと笑った。
(鋭い奴、あいかわらず)
軽い中に隠した自嘲を、あっさりと垣間見られたのだろう。
とっさに身構えたセシルの予想に反し、ルードはちらりと視線を彼にやっただけだった。
「『騎士団長補佐官』でありながら、陛下と対等に渡り合える奴も、そうそういやしないな」
変わりに発せられたその言葉に、苦笑するでもなくセシルは小さく息を吸った。
乾いた部屋の匂いが、鼻梁をすぅと通り抜けていった。
「まあ、そうだろうな」
ボリュームを抑えた声でそう返し、セシルは再び書類に目を通し始める。
「あいつだって、好きでそうなったわけじゃないさ」
わかってるだろうと視線をやれば、そうだろうなとばかりに肩をすくめる 友が見えた。
無表情で秀麗とした冷たさを感じさせる彼が、 実は意外とくだけた所作をしてみせるということを知ったのはもうだいぶ前のことだ。
見習い同然の下っ端からの付き合いだ。
彼が何を思い、感じるかなど見ずともわかるようになってしまった。
それは彼とて同じこと。
ルードはあっさりとセシルの机の端に腰を下ろして、にゅっと腕を伸ばした。
見た目以上にしっかりと筋肉がついたその腕はセシルの後頭部で一度とまり、 少しだけ力を入れてぶつけられた。
「いてぇ・・・」
さしてダメージを与えられてはいないくせに、両手で頭を押さえ込んで にらんでやれば、呆れ顔のルードとしっかりと目が合った。
「感傷的になるな。エンドとて、馬鹿じゃない」
(やっぱり、ばれるよなぁ)
かなわないなと息を吐いて、セシルは降伏とばかりに そのまま姿勢をだらしなく崩した。
「だってさ。あいつ、あの能力さえなければこんな所入らなくても良かったんだぜ。俺達は自分の意志でここに集った。どんな 中傷だって耐えて見せるさ。だけど、エンドは違うだろ ?」
端整な顎を机にぴたりとくっつけながら開いた口からは、物憂げな言葉が ポロリとこぼれ出る。
「エンドは"特殊"だ。…ああいった能力を持つ者は、この大陸でも稀有だから」
仕方がない、とは言いたくはない。
だけど、彼の魔術に長けすぎた天性の才。それに加えた彼自身の能力は 未知数だといわれている。
だからこそ、狙われる身であるのは確かだし、 生まれ持っての性質をほうっておくほど国は甘くはない。
まだ乳飲み子の頃に両親から引き離され、神殿で育てられたのは 100%彼の力のせいである。
(だからといって、あのじいさんがわざわざ俺に白羽の矢を立てた 理由がわかるわけじゃないんだけど)
机に突っ伏したままセシルはそっと目を閉じる。
あれは4年前、今よりもだいぶ幼かったエンドの顔が 眼裏にしっかりと浮かび上がっていた。


4年前の冬、ちょうどセシルが騎士団長に任命されて2年ほどたった 時だった。
ここ最近はめったに顔をだしにはこないが、 いつもひょっこりと姿を現しては、散々セシルをからかって帰っていく 一人の神官がいた。
年齢をじっくりと重ねたのだとすぐにわかる、どっしりとした威圧感を 吹き飛ばすほどのとんだ性格をしたパワフルなおとぼけものが、 神殿の最高連邦長だと知ったのは、あの時だった。
あっさりと自分の身分を暴露し面食らっているセシルに、 ある少年と面会するようにと強制した。
ぎゃあぎゃあと言い合いをする老人と騎士団長の 間にはいる、柔らかい声。
「初めまして、‥エンド・ラマスクリスです」
神殿の長官に連れてこられた少年は、おずおずとセシルにそう名乗った。
セシルとは4つ5つ違うであろうか。
幼い顔に、線の弱い体つきは、彼がまだ少年の域をまったくでていないこと をあらわしている。
「エンドをお前に預けることにした。セシル、ちゃんと面倒を見てやるのじゃぞ」
狸の異名をもつ好々爺は、くぐもった声で薄く笑い、エンドの背中をそっと押してよこした。
どうやら彼自身も聞かされていなかったようで、 押し出されたエンドの驚いた顔は印象的で今でも覚えている。
それでも状況を把握して エンドがセシルの部下と共に出ていったとき、智慧宿す瞳を セシルにむけて、老人はこう言った。
「ずっと神殿に篭らせておくわけにはいかん。エンドのためにならんからな。 異論を言うものもいたが、わしがそんなもんは全て押さえつけた。陛下にも許可を 頂いたから、あいつはもうおまえ付けの部下じゃ。 エンドは生真面目で補佐がうまい。おまえの補佐官としてすぐに 頭角を現すじゃろう。おおいに使ってやってくれ」
「使ってやってくれって…ちょっと待った。あの子、エンドだっけ? あんたのいいようじゃ、どう聞いてもわけありにしか 聞こえないんだよ」
セシルの言い分に、年老いた神官はゆっくりと片眉をあげてみせる。
「そんなことは、すぐにわかる。今日陛下と顔合わせをさせる約束じゃしの。 そのときに、エンドの能力がすぐにわかるわい」
「能力‥ねぇ」
ちゃかすように呟くセシルを楽しそうに見やる。
「おまえ、そんな知った口できるのも今のうちじゃぞ。あいつの力の前では、誰も、何もいえんようになる」
なにしろあふれあまるほどの才能を、このわしのもとで磨きあげたのだから。
「どうだか・・・」
ニヤリと笑ったその老人の顔に苦笑して、セシルは言葉尻を濁すにとどめた。
どうだかと評した魔術に、圧倒されたのはそれから数刻もたたぬころだ。
あれから場所を移動して、王城閲覧の間にセシルたちは召された。
4人の騎士団長がそろい、なおかつ陛下がいるなかで、老人も少年も 態度は立派はなものだった。
叩き込まれた丁寧な応対に、神殿特有の洗練された所作。
ためしに魔術を見せてみろという王の命令に嫌な顔ひとつせず、 エンドはそっと大きな部屋の中央にたつ。
彼が魔術と向き合った瞬間、部屋の空気ががらりとかわるのがすぐにわかった。
自分自身魔術を扱えることはできないが、長年の経験がこれは本物だと セシルに告げる。
それを感じ取ったのは、あいにくと セシルだけではなかった。
その場にいた騎士団長はもちろん、国王までもが目の前で起こる事態に驚愕を覚える。
息を呑む陛下側の人間の様子に、ただ満足そうに笑っていたのは 神官長ただ一人。
それすらも気づけないほどに、目の前に無限に広がり圧迫すら覚える 少年の身のうちに宿った魔力に思考を全て奪われた。
常の魔術師では逆立ちをしても出せぬほどのオーラすらまとい、 少年の詠唱は朗々と部屋中に低く響いて。
完全に自分の力場を築いたエンドは、魔法を発動させるべく、 最後のフレーズを鋭く言い放った。


「手続き完了しましたよ、陛下にも使者を出しました」


カチャと小さく扉の開く音と、エンド本人の柔らかな声に セシルははっと意識を現実に引き戻した。
気がつけば、心を完全に過去の海に浸しきっていたらしい。
それを悟られぬように「ありがとう、エンド」と返し、セシルは微笑んだ。
「おぉ、お茶まで持ってきてくれたのか?」
ちょうど飲みたいと思っていたところだったから、直のこと嬉しい。
セシルはふわりと微笑むと、差し出されたカップに手をやる。
ちょうどいい人肌に暖められた紅茶を口に含めば、 ふわりと品のいい香りが咥内に広がった。
「おいしいな」
「ありがとうございます」
心得たように少し口の端をあげる彼。
以外と機嫌がいいときのそれだとわかるようになったのは、 彼が着てからしばらくたったときだったように思う。
(あのときは、笑顔すらあまり見せてくれなかったような気が)
魔術を皆の前で見せたあの日以来、 エンドは目置かれた存在になった。
それは、軍事的なものでもあったし、なにより国王陛下が 彼を気に入ったゆえではある。
それはエンドの年にそぐわぬ知識の数や、上品な物腰、賢い話術 がそうさせたことであるが、 事情を知らぬものは、彼の魔術に惹かれたからだと 陰口をたたいた。
それを知ったとき、セシルはエンドに激しく詰め寄った。
なぜ言わなかったのか、と。
彼の部下なのである、庇護にいれるのはあたりまえのこと。
そういえば、エンドは驚いたように目を瞬きしたのだった。
考えても見なかったというその顔に、毒気を抜かれたものだ。
「セシル様?」
「あ、いや。どうした?」
(どうも過去を振り返りすぎていけない)
思念を振り払うかのように顔を横に振り、セシルは 気を取り直した表情でエンドと向かい合った。
怪訝そうにしているエンドの傍で、呆れた表情を浮かべる ルードに思わず苦笑した。
(うわぁ。見抜かれてる、見抜かれてる)
黙っていろと視線にこめて強いれば、理解してくれたのだろうか、 ひとつため息をついて、ルードが口を開く。
「セシル、エンドには言ってあるのか?」
「何を?」
本気でなにをいわんとしているのかがわからず、目を細める。
ルードは優雅にエンドの用意した茶をすすった。
「おまえの"巫女殿"の件だ」
「ああ・・・」
彼の言葉に、すぐに 合点がつく。
彼に詳しい説明は後にすると言い置いた後のこの激務だ。
ルードにもまだ、まともな説明を施してはいなかった。
彼はどうやらそれがずっとお気に召していなかったらしい。
「巫女?どういうことですか?」
首をかしげるエンドに座るように促すと、ルードもその椅子に腰掛ける。
「イグルイースに会うちょっと前まで、巫女にあったらしい。セシルが」
「まぁ、そうなんだけど」
しぶしぶそう答えれば、今度こそいぶかしむ表情でエンドがカップに伸ばした 手を止めた。
「…セシル様?どうして、キラマイア伯爵の邸に巫女がいるのですか?」
エンドの半ばあきれた声を聞きながら、セシルは口をにごらせる。
「いや。‥話すと長くなるんだが」
正直、どこまで話せばいいのかがわからない。
(そうそう簡単に信じる類のものじゃあないからな)
珍しく言いよどむ自分に何を思ったのだろうか。
エンドはニコリと微笑んで、口を開いた。
「この際何時間でも聞きますよ!ねえ、ルード様」
どこか言い聞かせるようなそのせりふに思わず笑いながら、 セシルはもう一度紅茶を口に含む。
さて、どうやって話そうかと事を順序だてながらも、 セシルは、ゆっくりと話し始めた。




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